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松くい虫空中散布
昨日は、島の松くい虫空中散布の予定日でした。

松くい虫空中散布とは、マツノザイセンチュウという松を枯らしてしまう虫を媒介するマツノマダラカミキリという虫を殺すという目的のために、殺虫剤をヘリコプターで空中から散布するというものです。

おととい、空中散布についてのおしらせの1枚の紙が回覧板で我が家に回ってきました。
天候の事情で散布は結果的に延期されましたが、私はこの回覧板ではじめて、島で薬剤の空中散布が行われている事を知り大変驚きました。

紙には、2週間は牛などを放牧しないように。散布中の外出はしないように。池の鯉などにかからぬようカバーをするように。具合がわるくなったら病院へいくように。などの注意事項がかいてありました。どのへんで何時頃の作業なのか、私の家の近くはどこで散布をするのかなどはわかりません。

松くい虫については、大阪にいるころから、日本全体で松くい虫の問題が大変深刻であること、その為の農薬の空中散布を行っている事、空中散布の成果には賛否両論あること、それによる住民の健康被害の報告が相次ぎ全国各地で近年次々に空中散布が中止になっている事などは新聞やテレビの特集などで知っていました。

ただまさか、美しい自然を観光資源の柱にし、第一次産業が主な財源である島でも農薬の空中散布が行われているとは思いも寄らず。ニュースで見ていたそれが翌朝に行われるということに大変驚きました。



小値賀には数多くの黒松が植林されています。松は島にとって大切な防風林・砂防林であり町のシンボルです。島は住んでみると驚くほど風が強い。防風林がないと農業・生活に支障をきたします。松くい虫の問題は大変難しく、松くい虫を退治しないと松は枯れ、様々な大きな損害がでる事が考えられます。

また、地上散布は空中散布以上の費用と人件費がかかるため、本年度は空中散布しか方法を見いだせないという厳しい状況もあるのだと思います。

しかしながらこのような散布にあたっては、日本中で問題になっていることですし、事前に説明会などが開かれ、農薬の安全性をデータで実証できる資料が配布されるものだと思っていましたので翌朝の散布を告げる突然の告知に本当にびっくり玄関に立ちつくしてしまいました。


私はエコロジストではありませんし環境問題にも詳しくありません。農家のみなさんが作物を育てるにあたって最低限の農薬を使わなければ流通にのせる数量・品質の商品を生産できない現実も理解していますし、多くの環境では必要に迫られ除草剤・殺虫剤などが使われていることも承知しています。家庭でいえばキンチョールだって蚊取り線香だってあります。私自身も環境に対して特別なこともしておらず、自分自身知らぬ間に沢山の環境を壊し、利用し生きている人間です。


でも、相手を選ばず無差別に空からふりかかる殺虫剤の空中散布にはやはり大きな不安を覚えます。


みなさんご存知のとおり、恥ずべき事に現在先進国で農薬の空中散布を許可している国は日本だけです。アメリカ等諸外国では私が生まれる以前、もう30年以上前から、人命にかかわる昆虫を介した伝染病などの対策以外はいかなる農薬も空中散布しないよう、法律で厳しく取り決められています。それほど危険で生態系を崩すものだという事をみんな知っています。

今回の空中散布は薬剤はスミパインMC 、主成分は フェニトロチオン、人畜には低毒性の薬物といわれています。人間には害が少ないといえど、駆除目的以外の沢山の昆虫たちまでもが一撃で死にます。ちいさな小鳥で息絶えるもの沢山います。空中散布後に木の実など食べないようにという人間の注意事項を、虫たち、鳥たちは耳にする事ができません。そして空中から撒かれた農薬は土に染みこみ、やがて海に流れ込みます。


ここで人間の事ばかり書いてしまうのは自然に対しておこがましいことですが、人間は食物連鎖の頂点にいます。かのレイチェル・カーソンが著書『沈黙の春』で取り上げられたとおり、食物連鎖の結果、生物に蓄積しやすい物質が上位捕食者に集中していく生物濃縮がおこります。海水からプランクトン、小魚、大魚へと食物連鎖上、上位の生物が餌を通して汚染物質を濃縮させてゆきます。その濃縮は、生物から生物を介しただけで何百倍にも濃縮されていきます。そしてこれら様々な生物をまた人間が摂取し濃縮される。最大の被害にあうのは、ほかでもない島の人々やその子孫です。


そして作業をしている皆さんの健康がものすごく心配です。飛散した農薬を吸い込む事は、たとえその時に変調はなくとも、必ず体内に蓄積され、ご本人や次世代の子孫に受け継がれます。島を愛し、松を守るために、純粋な思いで一生懸命作業している当のご本人の体を蝕むのはとても悲しい事です。


みなさん新聞などでご存知のように、他の地方では、散布後の多数の健康被害や薬品製造会社の虚偽の安全性の報告などが引き金となり、各地で住民や町のお母さんたちからなる会で空中散布の反対運動がありました。結果、今年は島根でも空中散布が中止となりました。群馬では県自身が住民の健康被害を考え、空中散布の自粛を市町村に促し、その他都道府県でも次々と中止が決定しています。


島では私が農薬散布があることをを知るような、目に見える反対運動はありませんでした。全国的に各地で反対運動、散布中止が広がっているなか、島では大きな動きにならない理由はわかりませんが、これは島にとって大変大きなチャンスであると思います。


島の皆さんは島を心から愛していて、誇りを持っておられます。高齢者とよばれる世代のみなさんも、高齢者と思えぬ行動力と若々しさ、他国と隣接した土地柄からか、とても新しい考え方に寛容で柔軟な考えを持たれています。


そんな皆さんの知恵を出し合い、新しい知識を取り入れ、新しい松との向き合い方を自主的に提案し、力を合わせて防風林を守っていくことができれば、それはどんな特産品よりも大きなニュース、全国の抱える大きな問題のモデルケースとなり、日本の環境先進地区としての大きな誇り、最大の観光資源となることは間違いありません。


松はとても大切な防風林です。そしてそれ以上に人間の健康、作業されている方の安全が大切です。まずは空中散布を中止した多くの地域から学び、空中散布よりピンポイントで散布できる地上散布に切りかえる時期にきているように感じます。


間伐や土壌改良、他樹木との植林、耐性のある松の苗木の育成などなんらかの方法を検討、調査し、動き出す事が出来れば、その作業は長い年月のかかる大変なプロジェクトですが、島の豊かな生態系をとりもどすとともに地域の大きな雇用にもつながります。それが本当の意味での美しい環境の島をうたうことができる、世界に誇れる大きな第一歩であると思います。


私も島に住まわせていただいている以上住民のひとりとして、これから島の松をどうやって守っていくのか、生態系を守り、海を守り、かつ島に合った自然な状態での防風林とはどのようなものなのか、農薬散布の代替え案、継続可能な森林保持の方法など島の為に真剣に考えていかなければと思うと同時に、自分の日常をふりかえり、環境への配慮の足らなさを改めて猛省しました。


私も毎日の暮らしがそうであるように、これだけ自然が豊かだと自然のちいさな変調にも気が付きにくいのかもしれません。島にずっとお住まいの方には、ここにある自然、松以外の生態系がどれほど美しく貴重であるのかが、豊かであるがゆえに感じずらいのかもしれません。だからこそ島の財産である自然は厳しく監視し守っていかなければなりません。まさに「木を見て森を見ず」では将来気がつけば大変なことになってしまいます。


自分たちが住んでいる島がどれほど奇跡的に美しいのか、この島の生態系や文化を守っていく事が現代社会においてどんなに素晴らしい価値と意味があることなのか、この島は世界一だと胸をはって誇れる美しい場所であるという事をしっかり胸において、これからも生活をしていきたいです。


島のお年寄りから昨日「空中散布について話をするのはよくない。島に住めなくなるよ。」と助言をいただきました。島はちいさなコミュニティ、センシティブな問題について言及するということに様々なリスクがあります。ですのでこのブログを書こうかどうか大変迷いました。島にとってマイナスになる事は書くべきではないとの思いもありました。

しかし、私たち夫婦の安住の地と小値賀島という世界に誇れる美しい島、沢山の生命や生態系、島の子供たちや住民の命を天秤にかければ結果はただひとつ。大好きなこの島に住めなくなる事はつらいですが、それとは比較にならないくらい、この島の生態系を守る事の方が重要です。また、化学物質過敏症などで離島に移住を検討されている方も多くいらっしゃると思います。田舎への移住に際し、空中散布というのは大変大きな線引きのひとつになると思い、私なりの覚悟をもってこのブログを書きました。私自身、強力な化学物質だけですが、強い殺虫剤などで喘息が出るタイプなので散布はとても不安です。


数日後に沢山の虫たちの命が失われる事が本当につらく、回覧板を受け取ってからいまだにぼんやり視界が霞みます。

この豊かで美しい自然と、島民のみなさんの健康、穏やかな暮らしだけは失ってないけません。未来の子供たちにこの美しい島を残すために、知らなかったではすまされない事も沢山あります。ここに住む以上は私自身しっかり勉強しなければなりません。



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Top▲ | by kurashi-asobi | 2010-05-19 08:55 | 島での暮らし
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